みずちの前みずちの前闇の女霊脈譚
日本の宗教

なぜ日本の宗教の信者数は、人口より多いのか

鈴木春信「Woman Visiting the Shrine in the Night」(夜に宮参りする女)

「日本人は無宗教だ」と、よく言われる。外国の人に宗教を聞かれて、「とくにありません」と答える人も多い。

ところが、国の統計で宗教の信者の数を見ると、話がまるで逆になる。

信者の数は、約1億7,500万人

文化庁は毎年、全国の宗教団体に、信者の数などをたずねる調査をしている。「宗教統計調査」という。

最新の結果(2024年12月31日現在)では、信者の数を全部足すと 175,054,047人。日本の人口は約1億2,400万人だから、その 約1.4倍 になる。

系統信者の数
神道系86,359,612人
仏教系80,463,918人
キリスト教系1,872,320人
その他(諸教)6,358,197人
合計175,054,047人

神道系と仏教系を足しただけで、約1億6,700万人。この時点で、もう人口を超えている。

理由1 数えているのは、宗教団体の側

この数字は、一人ひとりに「あなたの宗教は?」と聞いて集めたものではない。それぞれの宗教団体が、「うちの信者はこれだけいる」と届け出た数を、足し合わせたものだ。

信者の呼び方も、団体ごとに違う。神社なら氏子(うじこ)や崇敬者(すうけいしゃ)、お寺なら檀徒(だんと)、ほかにも教徒、会員、同人など。文化庁も、信者の決め方や数え方はそれぞれの団体が独自に定めている、と注意書きをつけている。

理由2 同じ人が、神社にもお寺にも数えられる

神社は、その土地に住む人をまとめて氏子として数えることがある。いっぽう、家がお寺の檀家であれば、同じ人がお寺の側にも数えられる。

一人の人が、神社の氏子でもあり、お寺の檀家でもある。日本では、それがめずらしくない。足し算をすれば、人口を超えるのは当然だ。

理由3 「信じる」より「する」宗教

もうひとつの理由は、日本の宗教との付き合い方そのものにある。

生まれたら、神社にお宮参りに行く。七五三も神社だ。お正月には初詣に出かける。結婚式は、教会や神社で挙げる。そして、お葬式は多くの人がお寺のやり方で行い、夏にはお盆を迎える。

ひとつの神を信じるかどうかを、日本人はあまり問題にしない。人生の節目や季節の行事ごとに、神社とお寺を使いわけている。

宗教学者の阿満利麿(あま としまろ)は、教祖や教えの書物をもつ宗教を「創唱宗教」、暮らしの中で受けつがれてきた宗教を「自然宗教」と呼んで分けた。日本人が「無宗教」と答えるとき、それは前者を持っていないという意味で、後者まで持っていないわけではない。

「無宗教」と、1億7,500万人のあいだ

統計の上では、日本人は人口より多い数の信者として数えられている。いっぽうで、自分を無宗教だと思っている人も多い。

どちらも本当だ。その二つのあいだに、「信じる」より「する」という、日本の宗教のかたちがある。

英語でひとことにまとめるなら、こうなる。

We don’t follow one god. We live with Shinto and Buddhist customs. (ひとつの神を信じてはいないが、神道と仏教の習わしとともに暮らしている)

暮らしの中の仏教は、行事だけではない。毎日つかう言葉のなかにも、仏教はそのまま残っている。

実は仏教から来た言葉5選 ―

出典:文化庁「令和7年の宗教統計調査の結果を公表します」(2024年12月31日現在)/人口は総務省統計局「人口推計」による概数。画像:鈴木春信「Woman Visiting the Shrine in the Night」(夜に宮参りする女・パブリックドメイン/Wikimedia Commons)。阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』(ちくま新書)